弁護士が企業の法務部へ転職するには|企業内弁護士への転職を成功させるポイント

企業内弁護士・インハウスローヤー 弁護士の転職

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弁護士といえば法律事務所で働くイメージが強いでしょうが、現代では「企業内弁護士」として働く弁護士も増えています。企業内弁護士は法務部で働くことが多いですが、法律事務所で働く弁護士が法務部へ転職することは簡単にできるのでしょうか?転職後の具体的なキャリアについても紹介します。

企業内弁護士は増えている

企業内弁護士が増えていることについて、公表されているデータと共に説明します。

企業内弁護士の推移

日本組織内弁護士協会の調査によると、企業内で働く弁護士の人数は年々増えています。2001年には66名だった企業内弁護士は、2020年には2,629名になりました。特に2011年以降の伸び率が大きいです。

  • 2011      587
  • 2012      771
  • 2013      953
  • 2014      1,179
  • 2015      1,442
  • 2016      1,707
  • 2017      1,931
  • 2018      2,161
  • 2019  2,418
  • 2020  2,629

参照:日本組織内弁護士協会

企業内弁護士を採用する企業の推移

企業内弁護士を採用する企業数も増えており、2001年の段階では39社でしたが2020年には1,220社となりました。以下、2020年の企業内弁護士を多く抱える企業上位20社についても紹介します。

  • 2020年:採用企業数:1,220社 採用人数計:2,629人
    順位 企業名 人数
  • 1 ヤフー 39
  • 2 LINE 26
  • 3 三井住友銀行 24
  • 3 三菱商事 24
  • 5 アマゾンジャパン 22
  • 5 野村證券 22
  • 7 三井住友信託銀行 21
  • 8 双日 20
  • 8 三井物産 20
  • 8 三菱UFJ銀行 20
  • 11 三菱UFJ信託銀行 19
  • 11 パナソニック 19
  • 11 丸紅 19
  • 14 KDDI 18
  • 15 第一生命保険 16
  • 15 住友電気工業 16
  • 17 豊田通商 16
  • 18 アクセンチュア 13
  • 18 みずほ証券 13
  • 18 伊藤忠商事 13

この通り、大手IT・金融・メーカー・商社が上位を占めています。

参照:日本組織内弁護士協会

企業内弁護士のほとんどが法務部関係で働いている

日本組織内弁護士協会の調査では、企業内弁護士の社内でのポジションについて質問しています。こちらの結果では、一般従業員(法務・知財・コンプライアンス)と答えたのが45%、管理職(法務・知財・コンプライアンス)と答えたのが37%で合計82%です。一般事業会社では法務関係の部門に所属する企業内弁護士がほとんどということがわかりました。
参照:日本組織内弁護士協会

企業内弁護士の業種別分布

企業内弁護士が働く企業の業種は、メーカーが41%、金融が17%、ITが13%、その他が29%でした。メーカー勤務が一番多いことがわかります。

参照:日本組織内弁護士協会

企業が法務部に弁護士を増やす理由

上記のデータ通り、企業内弁護士の人数・採用する企業が増えています。なぜ企業内弁護士が増えているのかを説明します。

グローバル対応

日本は人口減の影響から市場シェアの拡大に期待ができません。その結果、海外市場に目を向けて海外進出をしたり、海外企業と取引をはじめたりする企業が増えています。海外と取引をする場合には、日本とは異なる法律・商習慣になります。また、些細なことでも訴訟になりやすいので気を付けて契約をする必要があるのです。そのため、海外案件に強い弁護士が重宝され、企業内弁護士として採用したい企業が増えています。

コンプライアンス対応

企業運営でコンプライアンスが遵守されているかは、取引先や一般消費者からの信用にかかわります。法令を守っているか怪しい、または法令違反をしていて信用できないという評価になれば、売り上げを落とすことになるでしょう。

法令違反をすれば信頼回復までにも時間がかかりますので、普段からコンプライアンスを遵守する意識や手続きが必要です。パートやアルバイトといった従業員にもコンプライアンス教育が必要になるため、企業内弁護士が企業内で法令違反がないか目を光らせる必要があります。

具体的には、法令違反をしないようなマニュアルを作成したり、勉強会を実施したりすることが企業内弁護士には期待されます。

法務リスクに対応

特に上場企業では、コーポレート・ガバナンスの観点から法令違反をすることなく経営ができているかを監視する必要があります。例えば、粉飾決済をすれば企業の信頼を大きく落とすことになります。粉飾決算が明らかになれば、株価は暴落して株主は損失を被ることになるでしょう。

企業は株主のものであり、株主の利益を守れない企業は存続できません。そのため、企業内弁護士は法律に乗っ取った形で経営ができているかを監視し、法務リスクがあれば未然に改善するように動く役割が求められます。

法務部への転職を希望する弁護士が増えている理由

企業内弁護士として法務部で働くことを希望する弁護士が増えている理由についても説明します。

ワークライフバランス

法律事務所は残業が多く、休日出勤も多い風潮にあります。一昔前に比べると改善傾向にあるものの、一般企業に比べると男社会であり、労働時間が長いです。特に大手法律事務所は扱う案件の規模が大きくなるので、やらなければならない仕事も多くなります。また、熾烈な出世レースなので、同僚を出し抜こうとすればするほど激務になりやすいです。

そのため、出産や育児を考慮する必要がある女性の弁護士にとっては、働き方改革をしている一般事業会社の企業内弁護士として働いたほうがワークライフバランスはとりやすいです。その結果、一般事業会社の法務部勤務を求める弁護士が増えています。

収入の安定

弁護士の収入は高いイメージがあるかもしれませんが、弁護士の収入は年々減少傾向にあります。大手法律事務所は新卒で1,000万円越えになる一方で、案件が少ない中小法律事務所や地方法律事務所では年収500万円をきるケースもあります。

企業内弁護士を採用する一般事業会社は、一部上場などの優良企業がほとんどです。このような優良企業は従業員全体の給与水準も高いので、企業内弁護士の報酬も高くなる傾向になります。また、法律事務所のような歩合制ではなく、安定した収入が得られるのもメリットです。比較的高水準で安定した収入が得られることもあり、企業内弁護士は人気です。

法務部に転職した際に弁護士が行う主な仕事内容5つ

法務部が社内で求められる役割は、

  1. 法律を武器にして戦うアクセル
  2. 法的トラブルを未然に防ぐためにブレーキ

の役割の2つがあります。

前者は契約をする際に自社にとって有利に契約を進めるためには法律の知識を使って、担当部署をサポートすること。後者は不利な内容で契約を締結しないよう契約内容のチェックや、法的なトラブルを未然に防ぐ、あるいは適切に処理することです。

この項目では、企業内で法務部の求められる具体的な役割と主な業務について解説します。

契約・取引法務

企業間で取引を行う場合、必ず契約書の作成を行います。企業が取引先と結ぶ契約は、売買契約や秘密保持契約など様さまざま。

法務は民法や商法、国際法などに基づきこれらの契約書を作成や、契約の内容をチェックします。

また、企業買収などM&Aを行う場合は、契約の内容を決めたり、買収までにスケジューリングを行ったりと、経営を左右する局面で重要な役割を担うことも少なくありません。

機関法務

機関法務とは、株主総会や取締役会などの社内機関を法律に基づいて合法的に運営することです。株主総会や取締役会が会社法などの規定に違反せずに正しく行われているかをチェックします。また、定款の変更や、株式発行や分割の手続きなどの業務も行います。

法務相談

社員からの法律に関する相談を受けることも法務部の業務です。法務部は社内の法律のプロとして、社員を支える役割を担っています。

コンプライアンス・社内規定

コンプライアンスを社内に周知徹底させる目的で、社内研修の実施や相談窓口設置をします。また社内でのトラブルを未然に防止するために、社内ルールを作成したり、周知したりすることも法務部の重要な業務です。企業に対する社会的信頼を守る業務を行なっています。

紛争対応法務

企業活動を行う中で、取引企業や顧客との間でトラブルが発生した際の対応も法務の業務です。法務部はこれらの業務以外にも、企業が今後展開していく業界や海外の法律や法制度を調査したり、社内に周知させたりする業務など法律に関するあらゆる業務を行なっています。

企業内弁護士に求められる7つのスキル

企業に採用され、会社員と同じように働きながら法務に携わっていくインハウスでの仕事は法律事務所とちがい、自分の所属する部門以外の部署、他の弁護士とも連携しながら法務を進めていく必要があります。

インハウスに求められるスキルの大前提として、以下の5つが求められます。

  • 状況判断能力
  • リスクに対しての適切な判断・処理能力
  • 法的思考力
  • 法律知識
  • 信頼感

さらに、他部署や他の弁護士との連携であるコミュニケーション能力やビジネスセンスがインハウスには求められます。

コミュニケーション力

インハウスは、社内の他部署の人たちや外部の弁護士などと交渉や調整をしていく業務があります。また、世界に向けてビジネスを展開する企業や外資系企業では、上級レベルの英語力や文書作成能力も必須です。具体的に見ていきましょう。

英語力

特に外資系企業や海外との取引がある企業のインハウスの場合は、英文契約書の作成業務やチェック業務もありますので、上級レベルの英語力が求められる場合があります。可能であればTOEIC800点以上を取っておくことが望ましいです。

文書作成力

インハウスには、文書作成力も求められます。社内外における紛争があった場合、企業の組織内改正や、社内研修を行うことや、マニュアルの整備を行うこともあります。外資系企業や海外取引の多い企業の場合は、英文での文書作成も一任される場合があります。

交渉力

インハウスでは、交渉力も必要なスキルです。インハウスとして企業で経験を積んでくると、実際に取引先に出向いて契約交渉などに参加することがあります。その際に提示した契約内容の説明や対応をするのも、インハウスの業務です。

また、企業同士の裁判が発生したときに、外部弁護士と訴訟や交渉に対応や、海外での事業に際しての国際交渉も担当することがあります。このように、国内外における交渉力もインハウスに求められるスキルなのです。

ビジネスを推進する能力

インハウスは、ただ法務に携わって法の解釈ができるだけでは務まりません。企業の一員として、解釈した法律を適切に企業運営に落とし込みながら、ビジネスを推進する高い能力も問われてきます。

実務経験

インハウスは企業法務だけでなく、会社の発展にも貢献する実務経験が必要です。例えば、会社同士の合併絵であるM&Aをはじめ、IT・通信分野における知識、知的財産の分野に関する業務経験などです。また、企業によっては法律事務所以外の会社での勤務経験を持っていたほうが良いとされる場合があります。

マネジメント経験

若手インハウスに求められることが多いのは、これまでにマネジメント経験があるかどうかです。マネジメント経験のある弁護士は非常に少なく、インハウス転職市場では非常に珍しい人材とされています。企業では、年代が上がると後輩をマネジメントするスキルが問われてきます。

企業法務未経験の弁護士は法務部への転職は難しい?

上述の通り、企業内弁護士を採用する企業は増えているので、弁護士が法務部へ転職するのは難しくないといえるでしょう。以前は法務部でも弁護士資格を持たない人がほとんどでしたが、大手企業をはじめ司法試験合格者を法務部に迎えたいと考える企業が増えています。特に、大手企業の法務は複雑で案件も多いので、大手法律事務所での勤務経験が活きます。

しかし、企業としては企業法務に詳しい弁護士を採用したいので、一般民事などを主に活動していた弁護士が法務部に転職するには、個人受任でもよいので企業法務での経験がないと難しいのは確かです。

企業内弁護士の年収は750万円〜1,000万円

法務部に限定した調査はありませんが、企業内弁護士全体の年収調査があります。この調査によると、企業内弁護士の年収のボリュームゾーンは750万円〜1,000万円未満で28%の人がこの年収ゾーンに当てはまることがわかりました。続いて1,000万円〜1,250万円未満が23%です。

参照:日本組織内弁護士協会

企業内弁護士として法務部へ転職する4つの方法

それでは、企業内弁護士として法務部へ転職する方法を紹介します。

求人サイトに登録

法務部などの管理部門や弁護士に強い求人サイトでは、弁護士向けの求人が掲載されています。法務部で絞り込めば、様々な案件を見比べることができるので、希望する労働条件や給与の求人にエントリーします。

転職エージェントの活用

弁護士や法務部の転職に強い転職エージェントを活用することで、担当のキャリアアドバイザーから自分の希望に合った企業を紹介してもらえます。転職エージェントを利用するメリットとしては、転職エージェント限定の案件に出会える可能性があることです。特に大手企業では、優秀な人材だけと面談したいとの思いから信頼できる転職エージェントに限定して求人を募ることもあります。市場にはない案件に出会うためにも転職エージェントの登録をおすすめします。

また、転職エージェントでは面接日程の調整や履歴書・職務経歴書の添削などもしてくれます。初めての転職活動で何もわからない場合には、経験豊富なキャリアアドバイザーからアドバイスをもらえるので安心です。

紹介

紹介という方法で法務部へ転職することもできます。例えば、一般事業会社で企業内弁護士として働く知り合いがいる場合、追加の採用がないかを聞いてみるのもいいでしょう。採用が必要な場合には声をかけてもらえたり、子会社・関連会社などの採用で声がかかったりするかもしれません。紹介の場合は、知り合いから企業の雰囲気や働くイメージを聞くことができるので、ミスマッチが少ないのもメリットです。

ダイレクトリクルーティング

最近では、企業側から求職者に声をかけるダイレクトリクルーティングも増えています。具体的には、ダイレクトリクルーティングを行うプラットフォームを利用する形や、SNSなどで声がかかることがあります。採用者の目に留まるためにも、自分の経歴や実績・資格などわかりやすく記載・発信したほうが良いです。公に求人をしていない思わぬ企業から声がかかるのもダイレクトリクルーティングの面白さといえるでしょう。

法務部に転職した後の企業内弁護士としてのキャリアパス5つ

最後に、法務部に転職した後の一般事業会社でのキャリアパスについて説明します。

法務部の管理職

法務部に転職した後に、昇格して管理職になるキャリアも考えられます。一般事業会社では、弁護士資格を持たない従業員も法務部で働いていますが、知識面でいえば企業内弁護士の方が優れています。そのため、企業内弁護士が昇格して管理職になるのは有利といえるでしょう。

ただし、企業としての評価は知識だけではなく、企業経営への貢献です。知識があるだけで企業への貢献が認められなければ当然出世はできません。企業の経営が上手くいくように努力する姿勢を認めてもらえるように努力すべきといえるでしょう。

取締役

管理職を経験した後に取締役になるキャリアも考えられます。コンプライアンスを遵守した経営ができているか、また法令違反になるリスクがあればどのように解決するかを考え、経営の執行者(執行役員や部長などの管理職)へ指示をします。

CLO(最高法務責任者)

企業法務の重要性が意識されるようになったことから、CLO(最高法務責任者)を設置する企業も増えています。CLOはCFO(最高財務責任者)などと並ぶ役職です。企業法務に関する責任者であり、CEO(最高経営責任者)に対しても適切な指示をする必要があります。三菱UFJ銀行でも2019年に大手法律事務所出身の弁護士をCLOとして迎えました。
参照:Bloomberg

社外取締役

コーポレート・ガバナンスの観点から上場企業では社外取締役を設置する必要があります。社外取締役は元経営者が多いですが、企業の経営を監視する意味合いで弁護士が就任することも多いです。法律事務所勤務から社外取締役に就任することもありますが、企業法務を深く理解するために一般事業会社に転職した後に社外取締役になるという道もあります。

社外取締役は非常勤の場合、基本的には取締役会などの会議への参加する時だけ出勤します。キャパシティがあれば複数社掛け持ちすることもできるので、一社に所属するより収入アップにも期待できるでしょう。

社外監査役

取締役会設置会社などでは社外監査役を設置します。社外取締役は企業が適切な運営ができているかを監査する役割です。会計面を公認会計士・税理士の社外監査役が監査し、法務面を弁護士の社外監査役が監査します。

まとめ

企業内弁護士として働く弁護士は右肩上がりに増えており、約8割が法務関係の部署で働いています。グローバル対応、コーポレート・ガバナンスの強化、コンプライアンス意識の向上といった観点から企業内弁護士を採用したいという企業が増えています。一方、弁護士としてはワークライフバランスや安定した収入を評価することが多いようです。

このように需要と供給がマッチしていることもあり、弁護士が法務部へ転職する難易度は高くありません。転職エージェントや求人サイト、紹介、ダイレクトリクルーティングなどで転職を目指せます。

法務部に転職した後のキャリアパスとしては、管理職、役員、CLO、社外取締役、社外監査役などが考えられます。大手企業の企業内弁護士になれば給与面でも法律事務所勤務より優遇される可能性があるので、法務部に転職したい方は是非転職活動をしてみてはいかがでしょうか。

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