弁護士がインハウスへの転職を成功させるには|法律事務所業務との違いや転職時の注意点

企業内弁護士・インハウスローヤー

世間のコンプライアンスの関心の高まりもあって、各企業でも企業内弁護士(いわゆるインハウスローヤー)を採用する企業が増えてきています。

参考:組織内弁護士の統計データ|日本組織内弁護士協会

たったこの10年でインハウスローヤーの数が5倍にもなっており、この伸び方を見ると、今後もしばらくはインハウスローヤーが増え続けることは十分に予想されるでしょう。

弁護士資格を取得して法律事務所で働き始めたものの、収入面や実務内容、拘束時間などの理由から転職を考えている方は、新たにインハウスローヤーという選択肢も十分に考えられるようになってきました。

こちらの記事では、弁護士がインハウスローヤーに転職する場合には、一般的な法律事務所とはどのような違いがあるのか?どのような人材が求められているのか?などのご説明をします。

ぜひ参考にしていただき、インハウスローヤーに転職するかどうかの判断材料にされてみてください。

弁護士がインハウスに転職した際の仕事内容とは

インハウスローヤーに転職すると、今まで法律事務所などで個人や企業などを相手に実務を行ってきた働き方とは変わってくる部分も多いです。

まず、インハウスローヤーは弁護士資格を持った会社従業員という立場になり、主な業務内容は企業法務部内の仕事になります。一般弁護士のような民事事件や刑事事件を担当するようなことはほぼありません。

インハウスローヤーの業務内容には、以下のものが挙げられます。

  1. 社内規程の作成、管理
  2. 国内外企業との契約書の作成、審査、交渉
  3. 各種サービスの利用規約の作成、審査
  4. 各種サービスの企画、運営に対する法的支援
  5. 訴訟管理
  6. 株主総会対応
  7. 子会社管理(取締役会、株主総会の運営含む)
  8. M&Aの法務対応(DD対応、PMI時の買収先出向など)
  9. 業法(資金決済法など)対応
  10. グループの登記実務
  11. その他予防法務全般 など

顧問弁護士との違い

インハウスローヤーに近い業務として、顧問弁護士が思い浮かぶことでしょう。

顧問弁護士は、あくまでも会社の第三者としての助言や、限られた部分での法律問題の対応を行うに過ぎません。その一方でインハウスローヤーは主体的にプロジェクトに関わることが可能です。

例えば、企業があるプロジェクトを立ち上げた際、どんな法的課題があるか、契約周りの正確性は問題ないのかなどをプロジェクト発足初期から関わり、法的に問題が生じれば解決することが求められます。

企業の当事者という位置付けが、インハウスローヤーと顧問弁護士の最大の違いと言えます。

弁護士会会務や国選弁護事件の受任があることも

インハウスローヤーになったから社内の業務だけになるとは限らず、弁護士会会務や国選弁護事件の受任など、公益活動が業務の一部に盛り込まれることがあります。具体的には企業の就業規則によりますが、弁護士の能力向上や社会貢献の観点から、インハウスローヤーがこのような公益活動に積極的に参加するような取り組みをしている会社も少なくありません。

副業や個人事件受任をするインハウスローヤーもいる

日本組織内弁護士協会によると、インハウスローヤーが所属する会社の4割程度が個人案件の受任を認めているようです。ただ、実際に受任したことがある人は1割しかおらず、業務との並行は難しいようです。

大々的に広告を打ち出して集客するようなことはせずに、身近なところで法律問題が発生した際に案件を受け付けるといったスタンスが多いと考えられます。

インハウスローヤーと法律事務所の弁護士の違い

インハウスと法律事務所との働き方の違いは、業務内容だけではありません。特に収入や業務量などを気にされて転職を考える方も多いでしょう。

こちらの項目では、転職時に気になる以下の3つの内容について、インハウスと法律事務所での違いについてご説明します。

  • 収入
  • ライフワークバランス
  • 多い年齢

収入の違い

結論から言うと、インハウスローヤーも法律事務所の弁護士も平均年収でいえば、大きな違いはなく、800万円前後になることが多いです。ただ、今後の収入の伸び方や年齢が若いうちからの活躍について違いがあります。

弁護士の平均年収や中央値を解説|弁護士が転職で年収を上げる際に役立つスキルと具体的な転職方法

法律事務所の年収の特徴

法律事務所の場合は、パートナー弁護士になることが収入を大きく上げるためのポイントになってきます。パートナー弁護士になれれば、年収が1,000万円を超えることも十分にありますが、なれない場合には1,000万円未満が続くことも多いでしょう。

法律事務所に属する弁護士でも、個人案件を多く取ってきたり、独立することで年収1,000万円超えは狙えますが、業務量が比例してくることが注意点です。

裏を返せば、若いうちから個人案件を獲得しまくれば、20代での年収1,000万円以上を狙うこともできるとは言えます。コツコツ収入を積み上げるというものではなく、業務量や結果に応じて年収がバラつきやすいとも言えるでしょう。

インハウスローヤーの年収の特徴

インハウスローヤーの場合、昇給や昇格の人事制度が整備されていることがほとんどですので、基本的に安定して徐々に収入も上がっていく形です。管理職クラスになれば年収も1,000万円以上になってきます。

その一方で、若いうちから大きく稼ぐということは難しいと言えます。管理職クラスになれるのも、だいたい40歳を過ぎたあたりからで、それまでは年収500~1,000万円くらいになることがほとんどでしょう。

弁護士会費を出してくれる企業も多い

案外見逃せないことが弁護士会費の負担です。年間で数十万円にもなりますので、自己負担か否かで所得にも違いが出てくるでしょう。日本組織内弁護士協会によると、インハウスローヤーが所属する8割以上の企業が弁護士会費を会社が負担してくれているようです。

実際、弊社が転職支援させていただいた企業様も、多くは弁護士会費を会社が負担しているケースが多いです。法律事務所でも事務所が負担してくれている場合もありますが、多くが大手法律事務所です。一般的な法律事務所では、弁護士会費も自己負担になっていることが多いことでしょう。

ワークライフバランスの違い

日々の弁護士業務が激務で、インハウスローヤーへの転職を考えている方も少なくないでしょう。特に上でご説明したように、大きく稼ごうとすれば個人案件も扱うようになり、休める時間が徐々になくなってしまいます…。

実際、日本組織内弁護士協会が行ったアンケート結果でも、ワークライフバランスを求めてインハウスローヤーに転職した弁護士が最多となっています。

参考:企業内弁護士に関するアンケート集計結果|日本組織内弁護士協会

インハウスローヤーの場合、福利厚生環境の整備が充実しており、給与の安定が望めることから、比較的にワークライフバランスを保ちやすい結果となっています。

年齢の違い

弁護士の年齢

引用:基礎的な統計情報(2020)|日弁連

日弁連によると、弁護士全体の年齢の6割程度が30~40代が占めていることが分かります。日本組織内弁護士協会のアンケートを基にインハウスの弁護士に限定して年齢を見てみると、30~45歳の回答者が約8割以上となっており、この年代での転職活動が活発に行われているだろうと想像できます。

また、45歳以上のインハウス弁護士の数が非常に少なくなっています。

これは、冒頭でもお伝えしたように、インハウスローヤーを採用する企業が増えてきていること自体がここ数年のことでもあり、ご年配の弁護士が30~40代の働き盛りだった頃には、そもそもインハウスローヤーという働き方自体が珍しかったのだと考えられます。

弁護士がインハウスへの転職を成功させるためのポイント

金融・知的財産の知識は強みになる

企業がインハウスローヤーを採用する場合、多くが即戦力を求めており、法務部内でも責任ある立場を任されることが多いでしょう。

上でお伝えした、法務や金融、知的財産などの分野での知識・経験が問われることが多く、今まで一般の民事事件や刑事事件などしか経験したことがない弁護士であれば、転職活動も難航することが考えられます。

また、外資系企業や海外展開をしている企業であれば、国外の支店等とのやり取りも出てくるため、英語力も必須となってきます。

競争は激しい・企業法務の経験者が優遇

インハウスローヤーを採用する企業は増えていますが、その一方で弁護士の数自体も飽和状態にあります。他にもインハウスへの転職を考える弁護士も多いということが言えますので、難しい競争を勝ち抜く必要性も出てくるでしょう。

場合によっては、一部の条件のハードルを下げて求人を広く探してみたり、法律事務所で顧問弁護士としての案件を多く扱う経験をした後にインハウスへの転職を再度考えるケースも出てくるかもしれません。

履歴書の書き方

インハウスローヤーと法律事務所に在籍する弁護士とでは、まったく仕事環境が変わることもあり、その目的意識を高く掲げておく必要があります。インハウス弁護士を選んだ理由・その会社を選んだ理由を明確に伝えておくと良いでしょう。

また、弁護士を目指した動機については、一般の弁護士の転職活動でもよく聞かれる内容ですが、インハウスの転職でもしっかりご自身のポリシーは伝えられるようにしておくべきです。

その上で、自己アピールできる内容は漏れなくすべて記載しておく心構えで履歴書作成を行いましょう。

面接でのポイント

弁護士が転職する際の面接試験では、主に『傾聴力』と『専門能力』の2つが求められることになります。弁護士は、クライアントからの情報を的確に把握し、その上で法務を活用する形で対策を工夫します。そのため傾聴力があることを企業側に示すことはその後の印象に大きく影響します。

また、弁護士に対してプライドが高いなどとの印象を持っている採用担当者もいますので、組織に適応できるほどのコミュニケーションを取ることを心がけておきましょう。必ずプラスの印象になるはずです。

インハウスの転職では即戦力が求められる場合が多いので、専門能力・知識・実務経験をしっかり伝えられるような準備もしておきましょう。

インハウスに転職したい弁護士におすすめの転職エージェント

インハウスローヤーへの転職は、通常の弁護士の転職に比べて難しくなる場合があります。少しでも転職活動を有利にするために、必ず転職エージェントを活用しましょう。

転職エージェントでは、弁護士の転職に必要な求人から情報、アドバイスまで的確に行ってくれますので、いちいち求人を細かくチェックする手間が省けます。また、転職希望者にとって有利な立場を守り、必要に応じて報酬面での交渉も行ってくれ、さらに転職希望者がアピールできるポイントをできる限り提示する方法を教えてくれます。

弁護士向けの転職エージェントもいくつかありますので、まずはいくつか登録して情報を仕入れてみてください。また、インハウスへの転職は、一般企業の求人が豊富な大手転職エージェントへの登録も1つか2つしてみてください。 

NO-LIMIT(ノーリミット)

近年登場した弁護士向けの転職サービス『NO-LIMIT』。利用者ひとりひとりに寄り添った対応を心がけており、求める条件をしっかヒアリングし、ミスマッチを減らすために力を入れているようです。

また、望んだ求人がない場合には、条件に沿えるよう新規求人開拓も随時行っています。登録は無料で、非公開求人も観覧できるようになりますので、気になる方は登録してみてください。

【公式サイト】https://no-limit.careers/

MS-Agent

『MS-Agent』は、管理部門に特化した転職エージェントとして25年の歴史を持ちます。また、弁護士・法律事務所に関する転職サービスは10年前から本格始動しており、25年間で培った転職サービスとしてのノウハウを十分に活かしてくれています。もともと管理部門に力を入れている転職エージェントですので、インハウスの求人には非常に大きな強みを持ちます。

弁護士ドットコムキャリア

弁護士ドットコムキャリアは主に「弁護士に転職する人」が率先して利用する転職エージェントとなり、特に法務関連の転職情報をはじめ、外資系企業やIT関連企業に関する情報提供力は極めて高いです。

初めて転職エージェントを利用する場合でも手取り足取りの形で非常に丁寧にアドバイスしてくれる上、弁護士に転職する場合に必要なキャリアの生かし方を十分教えてくれるでしょう。

エン・エージェント

インハウスへの転職を考えているのであれば、大手転職エージェントへの登録もしておきましょう。エン・エージェントは、大手転職エージェントの1つで、大手優良企業への転職斡旋率・実績がかなり高いことで有名です。

インハウスローヤーに転職する場合は、どうしても特定企業からの信頼・実績が認められる必要があるため、どのように対応していくかを、経験豊富なアドバイザーが助言してくれます。

doda

dodaも大手転職エージェントの1つで、求人の多さとアドバイザーの質の高さがポイントです。転職成功サポートも非常に充実しているため、転職未経験の方でも安心して利用できる転職エージェントです。

まとめ

インハウスで弁護士を採用する企業は年々増えています。しかし、それに伴い、インハウスへ転職を考えている弁護士も増えています。特に、休日問わずに弁護士業務に追われる激務より、ワークライフバランスを求めて転職をする方が多いようです。

ただ、インハウスローヤーには、高度の専門・法律知識、そして実務経験が必要となります。主に法務、M&A、IT・通信、知的財産分野などでの業務経験が求められ、さらに英語力も必須となるため、ご自身のアピールポイントが少ないと、転職活動で苦戦を強いられてしまうかもしれません。

求人自体が少ないこともありますので、弁護士業界やハイクラス向け転職エージェントを利用しながら、ご自身の理想とする働き方に近い転職先を探していってください。

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